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バイトがあって今がある sleepy.ab 成山剛さん

2023年7月17日 公開

苦手なことが分かったから、音楽の道だけが残った。

透き通る歌声と幻想的なサウンドに、北海道の冬景色を連想させるノスタルジックなメロディ。今年、結成から25年を迎えたsleepy.ab(スリーピー)のボーカル・ギターの成山剛さんにバイトの経験やこれまでの道のりを聞いた。

内気な性格もステージで才能を開花

芸術の森野外ステージを舞台に、さまざまなアーティストや飲食店が集う夏フェス「OTO TO TABI presents『しゃけ音楽会2023』」。ステージを終えて間もなく取材に応じてくれた成山さんは、その歌声通りの穏やかで優しい雰囲気を持つ人物だ。「バイトなら100回以上落ちてますよ」と無邪気に笑う姿は、どこか少年らしさをも感じさせる。
成山さんの出身は北海道最東端に位置する根室市。幼いころから人前に出るのが何よりも苦手なタイプで、小学校では国語の時間に朗読をするのが恥ずかしくて仕方がなかったという。音楽に触れるきっかけとなったのは6年生のころ、合唱コンクールで歌うことになった森山良子さんの「さとうきび畑」だ。
「先生が僕の歌声を素晴らしいと評価してくれて、この曲の『ざわわ…』以外のパートを僕一人で歌ってほしいと言うんです。『そんな恥ずかしいことはできません』と涙ながらに訴えたんですが、先生は『どうしても』『大丈夫だ』と聞いてくれなくて(笑)。練習の場でもクラスメイトの前で泣いてばかりで、子どもながらに苦労したのを覚えています」
いよいよ迎えた当日は緊張を振り切り、なんとか最後まで歌いきったという成山さん。今にも泣き出しそうな目を上げると、その歌声に感激した父母や生徒が一斉に立ち上がり、会場に割れんばかりの拍手が鳴り響いたという。
「自分が人を感動させられたと初めて思った瞬間です。僕自身も全身に鳥肌が立つほどの感動を覚えましたね。まさに『ざわわ』と(笑)」

初めてのアルバイトで最もハードな経験

成山さんが初めてアルバイトをしたのは高校2年生の夏休み。根室から約2時間離れた羅臼町で、泊まり込みで20日間ほど昆布漁を手伝うという内容だった。
「祖父から『どんな仕事よりもハードだから最初に経験しておくと良い』と聞かされていたんです。求人を見ると時給も良いし、友達と一緒ならなんとかなるだろうと、親しい4人で羅臼へ向かいました。ところが現地に着くと自分たちのような高校生は他に誰もいなくて、筋肉隆々の怖そうなお兄さんばかり(笑)。仕事そのものも朝早くに港を出て、揺れ続ける船の上で夕方までにひたすら昆布を引き上げるという内容で、想像した以上にきつい仕事でした」
更に追い打ちを掛けたのが、「番屋」と呼ばれる詰所での共同生活。最年少の成山さんと友人たちは、先輩達の「使い走り」として夜も買い物を頼まれることが多かったのだという。昼夜を問わず休まらない生活に、友人たちは音を上げて次々と逃亡していったそうだ。
「朝起きたら友達が一人、また一人といなくなっていて、気付けば僕だけに。実を言うと僕も何度か逃げようとしたのですが、方向音痴なので番屋から出てもどっちが駅なのか、どうやって根室まで帰ったら良いのか分からなくて(笑)」
ただ、この能力(?)のおかげで、20日間を終えるころには先輩たちから一目置かれる存在になっていたのだと成山さんは笑う。
「それまで怖かった先輩たちから『お前、よく頑張ったな!』『大した忍耐力だ!』と褒められたんです。祖父の言う通りハードでしたけど、上下関係のルールやどんな出来事にもくじけない精神を身に付けられたのは、その後生きる上での糧になったと思います」

苦手が分かってるから25年続けられてきた。

高校卒業後は故郷を出て札幌の音楽専門学校へと進んだ成山さん。さまざまなアルバイトに挑戦しようとするも、結果は書類選考で落ちてばかり。その理由を「素直すぎた」と振り返る。
「『音楽活動をしたいから週末は休みたい』とか『きつい仕事はしたくない』と要望ばかり書いていたんです。今振り返るとそんな人が落ちるのは当たり前なんですけど、当時の僕は今以上に鈍感で(笑)」
ようやく受かったバイトも上手くいかず長続きしないことがほとんど。飲食店に勤めたら皿を割りオーダーを間違え、食品工場に勤めるとベルトコンベアに作業が追いつかない。土木作業員に挑戦した時は、誤って水道管を壊したことさえあるのだとか。ただ、どんなに失敗しても「君は仕事ができないけど、人が良いから」と許してもらえたのだという。どこか憎めない、成山さんのキャラクターを象徴するようなエピソードだ。
「自分は普通に働けないんだと痛感しましたね(笑)。だからこそ、音楽以外に向いていないことに気付きました。もしもきちんと働けていたら、音楽を続けていなかったかもしれません」
専門学校の卒業直前、「自分と同じように内気でどこのバンドにも属していなかった」という二人に声を掛けて結成したのが「sleepy.ab」だ。それから25年、メンバーそれぞれが生活の拠点を札幌の外に移したり、ソロ活動に励んだりといった変化はあったものの、今も変わらず北海道で活動し続けている。
「ただでさえ方向音痴だし、電車や飛行機での移動も苦手なので、東京に進出しようとは思わなかったんです(笑)。ここまで長く続けて来られたのは細く長く、場所を変えずに自分たちのペースで活動してきたから。自分はこの場所で、音楽を奏でることだけが向いている。それを教えてくれたのが、バイトなんじゃないかなあ」

成山剛さんの思い出バイト

レンタルビデオ店
映画が好きだったのが選んだ理由。でも一向に受からなくて、30件以上落ちました。
土木作業員
「そこ掘っておいて」と言われた場所を掘りすぎて、水道管が破裂しました。
パン工場
あらゆる工程ができなくて邪険にされ、最終的にパセリをかけるだけの係に(笑)。

プロフィール

sleepy.ab
1998年、札幌の音楽専門学校に通っていた成山剛 (Vo, Gt)、山内憲介(Gt)、田中秀幸(Ba)らで結成。2002年、1stアルバム「face the music」でデビュー。バンド名は「眠りのための音楽」をコンセプトに、接尾語の「ab」はabstract(=抽象的)やabsolute(=絶対的)の意味を込めている。フジロック、サマーソニック、ライジングサンなど各種大型フェスにも出演。成山はソロ活動の他、山内とのユニット「成山内」、写真家としても活動。
オフィシャルサイト:
https://sleepyab.info/

インフォメーション

●ライブ情報
「sleepy.ab 25周年記念 Live TOUR」札幌公演

11/11(土)ベッシーホール
■開場/18:00
■開演/18:30
■一般発売日/8/26(土)10:00〜
■お問い合わせ/ウエス
■TEL/011-611-1000

バイトがあって今がある

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